インプラントについて
インプラント(人工歯根)と、その本当の価値を御存じでしょうか?
私が実感として、つくづく感じているインプラントの価値は、「口の崩壊をくい止める手段」としてです。
歯はそもそも28本あり、咬む力を支えています。年令と供に歯の数が減るのは歯周病や虫歯が原因といわれていますが、現実的に歯がダメになる一番の原因は、
咬む力を支えるだけの歯の数が無いところに、歯周病が進行することによって、骨が急速に喪失するからです。
歯周病が進行しているケースでも、歯の数が28本そろっている場合は、適切な治療によって、かなり長期に歯を維持することが可能です。
しかし、大臼歯や小臼歯による左右の噛み合わせが、歯の数の減少によって、しっかりしていない場合は、残っている歯がその負担をして、だんだん悪くなり、抜歯することになる場合が多いのです。
例えば家の柱を考えてみた時、28本の柱が必要な設計に対して柱が10本しかない場合には、やはり無理があり、地震があれば倒壊してしまいますし、屋根に雪が積もると倒れます。
例えばトレーラーを考えた場合、本来タイヤが16輪で走っているトレーラーが4輪だけで走っていると、いずれ早期にパンクしてしまいます。
人の歯も同じように、28本ある歯が少なくなっている場合、残っている歯が無くなった歯の負担をしている訳で、無理があるのです。 これを根本的に解決するのは取り外しの義歯では不可能で、骨で咬む力を支持するインプラント以外には方法がないのです。 当院でも大臼歯部にインプラントを植立したことにより、小臼歯の動揺が止まったケースは多数あります。
インプラントについて
私がこのインプラントという言葉を聞いたには大学時代でした。もう20年も前の話です。当時のインプラント治療のイメージは 「快適かもしれないが、長期的には安定しない、不確実な治療」でした。 その後時代はインプラントを進化させ、現在のイメージは「快適で長期に安定する、確実な治療」になりました。
ジーシーインプラントについて
当院では骨量が充分にあるケースでは40年の実績があるブローネマルクタイプのジーシーインプラントを使用しています。 ブローネマルクインプラントというのは世界で一番長い歴史のあるインプラントで世界中のインプラントの手本となっているインプラント規格です。 インプラントの直径が3.75ミリ~3.8ミリでストレートなネジ形状です。このブローネマルクシステムはスゥエーデン製ですが、 その後多くの後発メーカーがブローネマルクシステムの規格を維持しつつより、骨とくっつきやすい表面構造を開発し、 現在はブローネマルクシステム自体もオリジナルの機械研磨された表面構造から粗造な表面構造に変更しているくらいです。
その他にブローネマルクシステムの弱点であるネジが緩みやすい、ネジが折れやすいなどの問題を克服したのがジーシーインプラントです。 このメーカーは日本製です。従来、大学病院ではブローネマルクインプラントの使用がほとんどでしたが、現在ではジーシーインプラントなどの後発メーカーにシェアを奪われつつあるのが現状です。 やはり、工業製品としての精度と品質の安定度はやはり日本製がすばらしく、GMのシェアを抜いたトヨタのようなものかもしれません。
もう一つジーシーのインプラントがブローネマルシステムその他のインプラントシステムを大きく出し抜いている点があります。 当院のメインインプラントが現在ジーシーインプラントになった理由はここにあります。インプラントを埋める場合にはインプラントを埋める穴をドリルで掘ります。 エンドポアインプラントやリプレイステーバードなどの台形や歯根型のインプラントはインプラントと同じ大きさの穴を掘る必要があります。 これに対して機械研磨のブローネマルクインプラントはインプラント自体がドリルの能力があり、骨の上部だけ穴を掘れば、時計の秒針が動くような回転スピードでゆっくりインプラントを埋入することが可能でした。 このことは、下歯槽神経損傷による下口唇麻痺を回避することに大きく役立っていました。ところが機械研磨のインプラントは骨との結合が弱く、失敗する確率が高かった訳です。
そこに、インプラント表面を酸処理やブラスト処理などによって粗造にすることにより骨との結合をよくする技術が出てきました。 元祖ブローネマルクシステムもこの方法を導入しインプラントの成功率をあげることができるようになりました。その反面、ドリルでの穴あけは深い場所まできっちりやらないとインプラントが骨の中に入っていかないようになりました。 神経損傷を避ける為には神経から3ミリの安全域をとってドリルで穴を開けます。それ以上近づきすぎると下口唇麻痺をおこす可能性があるからです。 ところが、ジーシーインプラントは表面は粗造な骨との結合が優れた処理がしてあるのですが、刃の部分はマスキングにより機械研磨面がのこしてあります。 よって骨の上部だけドリルで掘れば、神経ぎりぎりまでインプラントを埋めても神経損傷がおきません。通常自分の歯を失った場合、特に2歯以上の連続した歯を失った場合は元、歯が埋まっていた歯槽骨は吸収して無くなります。 よって、もともと歯があった場所にインプラントを埋めることは不可能になります。特に下顎の臼歯部は下歯槽神経があるのでますます理想的なポジションに埋入することは難しくなります。 この、難しいインプラントポジションを最大限理想的な位置に近づける為に、ジーシーインプラントを現在はメインで使用しています。
エンドポアインプラントについて
エンドポアインプラントはトロント大学のバイオリサーチセンターとトロント大学歯学部が10年をかけて開発した製品で、 条件が悪い骨でも極めて高い確率で骨と強固にくっつくインプラントです。 デポーター教授発表の症例でも、ブローネマルクシステムや、3iインプラントがくっつかなかったリカバリーにエンドポアインプラントを用い、ほとんどのケースで成功をおさめているとの報告でした。 日本では日本大学歯学部歯科保存学第二講座の小木曽助教授の発表がクインテッセンス出版インプラントYEAR BOOK 2002に載っていますので参照下さい。
このインプラントの特徴はきわめて小さいのに、成功率が高いところにあります。小さいインプラントでOKであるということは、ドクターにも患者にも多くのメリットがあります。 まず小さいということは、骨を削る量も極めて少ないことを意味します。患者側から見ると、術後の疼痛や腫れが極めて軽微です。術後に痛みがあるということで、痛み止めの薬を追加した患者さんは皆無です。 また手術もシンプルで短時間で終了します。当院では1時間で上顎に10本埋入したケースや、1時間で下顎に12本埋入したケースがありますが、術後の腫れや痛みはほとんどありませんでした。 またネジ構造ではなく、台形状なので、シビアなソケットリフト時に、強固な初期固定を得られやすいというメリットもあります。
左右ともエンドポアインプラント(左は大きさが小さいことを示した模式図)
現在迄に200本以上のエンドポアインプラント手術を行いましたが、コントロールが出来ていない重症の糖尿病に罹患している患者さん1名を除いて他の患者さんでは全て順調に機能しています。 重症の糖尿病の患者さんはインプラントを20本埋入した内、2本が骨とくっつきませんでしたが、再手術により現在は正常に機能しています。 多くの統計からみると、インプラントの90%以上は10年以上正常に機能しています。これは天然の歯をブリッジによって治療した結果より、長期間安定しており、歯科だけでなく他科の治療の中でも優秀な結果であるといえます。
エンドポアインプラントの開発チームのデポーター教授と筆者
私は自分の歯が揃っており、インプラントと入れ歯の比較はできませんが、母親の入れ歯をインプラントに代えたところ、自分の歯とかわらないとのことで非常に喜こんでいます。
入れ歯と比べ物にならないくらい快適である、というのがインプラント治療をうけた患者さんの意見です。
私の臨床実感として、これくらい患者さんから感謝される治療はありません。
とくに現時点、当院で行っているエンドポアインプラントは世界最小のインプラントで、たった 5ミリ埋めれば歯として問題なく機能します。 手術も楽で、1時間で下顎に12本埋入できます。骨の削除量が他のインプラントと比較して極端に少ない為、痛みもありません。昔12ミリ以上のインプラントを苦労して埋入していたのが嘘のような快適さです。

インプラントを埋める部位に切開をします。

このケースはドリルによる切削は行わず、オステオトームでインプラントを入れる穴を開けました。

穴にインプラントを入れます。

歯茎を縫って終わりです。かかった時間は15分程です。
